大学英語会史についての書誌目録 2024年9月14日公開版
大学英語会史についての書誌目録
2024年9月14日公開版
未谷おと編
【序文】
それぞれの大学の課外活動として英語会は発足した。教育的な活動であるが、明治の大学生といえば新時代の国家を背負うエリートであり、学生自らが率先していたと思われる。その中で行われたイベントとしての英語大会では、スピーチ、ディスカッション、ディベート、ドラマが中心に行われた。私が注目しているのはドラマであり、すなわち英語劇である。
英語劇とは、文字通り英語での演劇ということになる。異国の言葉で、異国の劇をすれば、出演者にとって大きなチャレンジであり、教育効果も多いに高いといっても異議を唱えるものはいないだろう。また、明治時代の英語劇は、エリート候補生が出演するものであり、相当な権威があったと言われている。こうした英語劇だが、演劇史ではほぼ無視されており、学生たちの活動で取り上げられているのは主に演劇部のものである。なぜこうした無視が起こったかというと、おそらくは同時代的な演劇雑誌に取り上げられなかったからだと思われる。演劇史で事後的に参照されるのは第一に演劇雑誌だからだ。(英語劇は主として英文学・英語教育の雑誌に記事がある。大学新聞にも)英語劇出身の俳優もいただろうが、出世した俳優の出身母体はあまり注目されず、当たり役が注目されるということもあっただろう。
大学英語会における英語劇では、大正時代に流行とされたアイルランド演劇も取り上げられた。特に、セリフにアイルランド訛りがなく、一幕物がほとんどだったダンセイニ卿(当時は「ロード・ダンセニ-」「ロード・ダンセニイ」「ロード・ダンセーニ」等と呼称)の戯曲はさかんに上演された。これは、ダンセイニ研究者にとっては注目すべきことであったが、資料がなかなか見つからず、調査は困難を極めた。ところが、ここ数週間で予想以上の資料が見つかり、一人で大騒ぎしているのである。ダンセイニ上演目録も更新できそうだ。
本書誌は、上記のような勢いを駆って制作されるものであり、私と同じように英語会の資料を集めたいという研究者に向けて公開されるものである。
【凡例】
一、本書誌は、旧制高等学校を含む大学における英語会の活動を記した資料を集めた。
一、団体名が「英語会」でなくとも同等の活動を行う集団であれば、それを含めた。(例:一橋大学国際部)
一、並びは刊行順とした。
一、万が一、識者がいらっしゃいましたら、ご指摘などお待ちしています。
【書式】
『書名』著者・編者、刊行団体、発行年、所蔵、編者所感
『一橋大学国際部史』国際部史編輯委員会、一橋大学学園史編纂事業委員会、1983.3
所蔵:一橋大学図書館
『麗沢大学英語劇グループの歴史 : (1935年-1983年)』麗沢大学イギリス語学科編、麗沢大学イギリス語学科発行、1983.3
所蔵:麗澤大学図書館
所感:本書を手に取るまで麗澤大学(書名は「麗沢」表記)の名前を聞いたことがなかった。掲載の上演目録を見るとシェイクスピアばかりだが、1967年にはアイルランド劇であるグレゴリー夫人「月の出」が上演されたようだ。本書誌編者架蔵。
『慶應義塾大学英語会史』慶應義塾大学英語会百周年記念事業準備委員会編集、慶應義塾大学英語会, 1994.6
所蔵:慶應義塾大学図書館、北海道大学図書館。
所感:本書誌編者架蔵。
『早稲田大学英語会一〇〇年史』
所蔵:東京都立図書館、大阪府立図書館、東京大学総合図書館、大阪大学総合図書館、他多数。
所感:全国の図書館に所蔵があり、もっとも閲覧しやすい本である。また、ウェブサイト上でDLできる。本書誌編者架蔵。
『立教大学英語会百年史 : For the glory of Rikkyo E.S.S.』立教大学英語会百年史編集委員会、立英会、1998.5
所蔵:広島大学図書館、立教大学図書館
『関西学院大学英語研究部ESS100年史』関西学院大学英語研究部編、 関西学院大学英語研究部創部100周年記念事業委員会、1998.8
所蔵:大阪府立中央図書館(荒本)、関西学院大学図書館、大阪大学外国学図書館、東京大学総合図書館、明治大学図書館など
『同志社大学ESS創部100周年誌』林廸男, 守田一夫編集責任、同志社大学ESS OB・OG会、2021年9月
所蔵:同志社大学図書館、同志社女子大学今出川図書館、同志社女子大学京田辺図書館