同人誌『片影』発行及び委託販売のお知らせ

ダンセイニ研究誌「PEGANA LOST」(ペガーナロスト)に評論を執筆していただいている小野塚力さんと一緒に同人誌を発行していくことになりました。私の担当は編集です。文章を切ったり貼ったり、校正したり、レイアウトを決めたり、表紙のデザインをやったりします。最近、ペガーナロスト以外の編集をしていなかったので、新鮮な気持ちで取り組めました。楽しかったです。

この同人雑誌のタイトルは「片影」。(当初、「Rマガジン」になりそうだったのですが、小野塚さんに猛反対されました。実はまだ未練があります)元ネタは、芥川龍之介によるE・A・ポーの紹介記事です。副題の「幻影文藝雑誌」はただの思いつきで、内実はありませんが、幻想的な作品や作家を取り上げたので、結果的には雑誌のカラーの紹介になったかなと。目次は次の通りです。

・「水晶散歩」(長編小説、連載)  kao(堀内薫)  5
・「水晶散歩」世界の紹介 64
・「反現実の影のもとで―中井英夫をめぐる随想」  小野塚力  67
・「ラヴクラフトにおけるダンセイニ受容(1) 「北極星」における想像力 73

ちなみに、夏コミにてすでに先行販売させていただいております。限定100部、定価1000円となります。

堀内薫さんの「水晶散歩」は人形作家による世界の活字化というべきものです。ご本人による静謐な鉛筆画を載せています。ページ数の関係で鉛筆画は載せないという方針で編集を進めていたのですが、あらためて鉛筆画を見て感動し、これは載せなければ雑誌を出す意味がないと考え直しました。印刷も思った以上にきれいに出てくれました。印刷して下さったHOPE21さんに感謝です。文章の方も、造形作家独特の表現に関心させられました。今号の目玉記事です。

小野塚さんの中井英夫論は、太宰をからめながら、中井が作品で目指したものを追っていきます。私などはこの論を読んで、中井というのはひどく自滅的な作家なのだなあと思いました。もっとも、物理主義者の私なぞが何をいっても機能なぞしませんが。いや、その前に中井の作品はひとつも読んでいないという大問題があります。

私の書いたラヴクラフト論は、彼がダンセイニからどんな影響を受けたのか、その結果としてどうなったのかを追求していく連載です。今回は、ダンセイニに出会う前にラヴクラフトが書いた「北極星」という幻想短編の分析を通じて、ラヴクラフトがなぜダンセイニ作品を熱狂的に受け入れたのかを考えています。ラヴクラフトについて書かれた文章はたくさんあっても、作品論となるとあまり見ないので、希少価値はあるかなと思います。中々に面白く書けたんじゃないかと。

委託先は古書肆マルドロールさんです。手持ちの在庫はすべて送ってあります。
http://www.aisasystem.co.jp/~maldoror/

このエントリがお買い上げのきっかけのひとつにでもなれば幸いです。

なお、次号は冬コミ合わせでの発行を計画し、執筆もぼちぼち進めていっております。コミケに出品予定がないので、委託販売がメインになります。よろしくお願いします。