吉村鉄太郎(片山達吉)著作目録

吉村鉄太郎(片山達吉)著作目録
2020年3月29日版
未谷おと編

【序文】
 吉村鉄太郎は、明治33年6月20日生まれ。文学婦人とも言われた片山廣子(筆名として松村みね子とも名乗る)と、大蔵官僚にして日本銀行理事の片山貞治郎の第一子、長男。妹に片山総子(筆名は宗瑛、井本しげ)がいる。東京帝国大学法学部を出て川崎第百銀行に就職。堀辰雄川端康成神西清横光利一たちと共に同人誌に参加し、海外作家の引用を踏まえた高踏的・衒学的な文学評論を雑誌に発表した。昭和20年3月24日、心臓病で亡くなった。
 生前に単著もなく、小説を書かなかった残さなかったため、死後は忘れられることになった。文学評論は大正末から始められ、昭和9年までで筆を折ったが、その理由は明らかにされていない。

【入手について】
 吉村鉄太郎の著作のほとんどが雑誌収録であるため、これらを集めるには図書館の利用が必須となる。大阪にお住まいなら大阪府立図書館と大阪市立中央図書館に文芸雑誌の復刻版がいろいろあるし、ついでに国会デジタルも閲覧及び複写も出来るが、最終的に国会図書館日本近代文学館、それに神奈川近代文学館に行くか、遠隔複写を頼むことになるだろう。復刻版の解説に鉄太郎への言及が含まれていることがあるので、確認するのが望ましい。
 『現代日本文芸総覧』と「雑誌記事索引集成データベース」には掲載ページ数が明記されていることがあるので、複写の際には役立つかもしれない。

【参考文献】
現代日本文芸総覧』全4冊
『日本近代詩作品年表』全4冊
『現代詩誌総覧』全7冊
猪熊雄治「素描・吉村鉄太郎」(「学苑」平成4年1月629号)
国会図書館の検索
日本の古本屋
カーリル(公共図書館の横断検索)
雑誌記事索引集成データベース(大阪府立図書館、国会図書館、各大学図書館などで閲覧可能)

凡例
一、本目録には片山廣子の長男、吉村鉄太郎(本名:片山達吉)の著作を集めた。
一、鉄太郎の単行本は存在が確認されていないため、本目録は主に雑誌で構成されている。そのため、普通の著作目録は発行順に並べるものであるが、図書館でのコピーを簡便にするために、雑誌別の収録とした。雑誌の順番は入力順とした。
一、甚だ無責任なことだが、編者は第一書房版「文学」以外は実物を確認していない。三日ほどでこれを作っているので諦めてもらいたい。
一、年号が統一されていないが、飽きっぽい編者のことなので許していただきたい。(更新することがあれば修正します)
一、新型コロナウィルスの蔓延が原因となって図書館が長期間閉館していて気が滅入るけど、落ち着いて入手した文献の精読でもしていきましょう。


「文学」第一書房 昭和4-5年 全6号 復刻版解説に鉄太郎への言及
 昭和4年10月 第1号「疲労の詩人」48-53p (評論。ホフマンスタール。芥川への言及)
 昭和4年11月 第2号「西部戦線異状なし」91-95p(書評)
 昭和4年12月 第3号「片岡鉄兵氏に」67-69p(評論。堀への言及)
 同 「手帳 アメリカニズム」72-73p(評論)
 昭和5年1月 第4号「片岡鉄兵」10-16p(評論)
 昭和5年2月 第5号「室生犀星」84-88p(評論)
 第6号 なし

「苑(創)」
 昭和9年1月 第1冊「西脇純三郎氏の精神」92-94p

「山繭」大正13年-昭和4年
 昭和3年1月(3.2)「自由画風に――ソーダフアンテン、音楽会」(随想二編)
 昭和3年3月(3.3)「自由画風に――正岡子規、アプトン・シンクレア」
 同       カジミル・エートシュミット「シュテルンハイム」(翻訳)
 昭和3年4月(3.4)「マリノ対話編 ―鸚鵡と虎・エトセトラ」
 同       ポオル・モオラン「アンドレ・ジットについて―貨幣偽造者、コンゴ紀行」(翻訳)
 昭和3年5月(3.5)「マリノ対話編 ―音響」
 昭和3年6月(3.6)「マリノ対話編 ―バナゝ」
 昭和4年2月(4.1)「青木晋への手紙」

「詩と詩論」
 昭和4年9月 第5冊「ポオル・ヴアレリイ ―『ヴアリエテ』について」
 昭和6年9月 第13冊「純粋小説」

「文学」(「詩と詩論」改題)厚生閣書店
 昭和7年3月 第1冊「いくつかの転回点」(エッセイ)所蔵:国会D
 昭和8年6月 第6冊「A Second Mr. H. G. Wels」(エッセイ)所蔵:国会D

「文芸レビュー」
 昭和6年1月(3.1)「予想さるる日本文壇一九三一年」(アンケート)

「詩・現実」
 昭和6年3月 第4冊「世界選手」(ポオル・モオラン著、飯島正訳)(批評)

「新文学研究」昭和6-7年(全6輯)
 昭和6年4月 第2輯「伝統の危険について」(評論)
 昭和7年2月 第5輯「古典への憧憬」(評論)

「小説」(クォータリー)芝書店 昭和7年 全3輯
 昭和7年1月 第1輯「夏目漱石 ―明治文学のシルエットの一部」(評論)所蔵:国会D

「文学界」昭和8-19年 全119冊
 昭和16年12月(8.12)「南郊読書記」(エッセイ)

「行動」昭和8-10年(全24号)
 昭和9年1月(2.1)「古典を中心として」(随想)

「箒」(第2号より「虹」と改題)「箒」発行所(虹社) 大正15年-昭和2年
 大正15年9月 第1号「私の手帳 シヤルル・ヴイルドラツク『ミシヱルオオクレヱル』」
 同 「私の手帳 ヘンリイ・フオード『我生涯と事業」」
 昭和2年5月(1.2)「自由画風に シヤルル・ル井・フ井リツプ ―「シヤルヽ・ブランシヤアル」を中心として―」
 同 「自由画風に 島村藤村(山崎斌「藤村の歩める道」」
 昭和2年6月(1.3) ラフアエロ・ピツコオリ「ピランデルロ」(翻訳)
 同 「自由画風に 書翰集、ビルデイング」
 昭和2年8月(1.4)「自由画風に 我等今如何にして「河童」を理論づけ得るか、レヴイ・ブリユールの言葉」
 昭和2年9月(1.5) イリヤ・エレンブルク「新しき浪漫主義」(翻訳)
 同 「プロスペル・メリメ
 昭和2年11月(1.6) 「「虹」同人 堀辰雄、大野俊一、吉村鉄太郎、竹内龍次、青木晋、神西礼吉」
 同 「イリヤ・エレンブルグ――八住利雄氏訳「けれども地球は廻つてゐる」」
 同 「イリヤ・エレンブルグ――河村雅氏訳「フリオ・フレニトとその弟子達」

「新潮」
 昭和5年11月(27.11)「共同制作を中心として」(評論)
 昭和7年2月(29.2)「文学雑話」(評論)
 昭和7年7月(29.7)「同人雑誌の問題」(評論)

「創作月刊」昭和3-4年
 昭和3年2月(1.1)「新しき投機者達に」(評論)
 昭和3年4月(1.3)「速度の賛美者を語る」(評論)
 同 マコーム・カウリイ「マルセル・プルウスト」(翻訳)
 昭和3年9月(1.8)「疾走する読者 八月号月評」(評論)
 昭和3年10月(1.9)「疾走する読者 九月号月評」(評論。同号に松村みね子「Kの返した本」)
 昭和3年11月(1.10)「疾走する読者 十月号月評」(評論)
 昭和4年3月(2.3)「堀辰雄 間接的評論」(評論)

「近代生活」
 昭和5年6月(2.6)「新興芸術派作家のカリカチユア」(多作家による評論?)
 昭和5年8月(2.8)「田山花袋の死」(評論)

「作品」作品社 復刻版あり
 昭和5年5月(1.1)「一九一四年七月」(評論。同号に宗瑛「アハブはまだ大きくならない」)
 昭和5年6月(1.2)「五月の批評」(「ルウベンスの戯画」等)
 昭和5年9月(1.5)「ポール・モーランのニューヨーク」(紹介。連載1)
 昭和5年10月(1.6)「ポール・モーランのニューヨーク」(紹介。完)
 昭和5年11月(1.7)「フランス文学を如何に観るか」(座談会。宗瑛、堀辰雄など)
 昭和6年1月(2.1)通巻9号?「一九三一年の人 吉村鉄太郎―堀辰雄堀辰雄ー吉村鉄太郎」(宗瑛も同コーナーに寄稿)
 昭和6年2月(2.2)通巻10号?「日に背いて」(時評)
 昭和6年4月(2.4)通巻12号「三月の作品 一人一作評」(宗瑛も同コーナーに参加)
 昭和6年5月(2.5)通巻13号「苦行僧の文学」(評論)
 同 「四月の作品 一人一作評」(宗瑛も同コーナーに参加)
 昭和6年10月(2.10)通巻18号「作品の会合」(座談会)
 昭和7年1月(3.1)通巻21号「『書方草紙』」(書評?)
 昭和7年3月(3.3)通巻23号「二月の作品 一人一作評」(宗瑛も参加)
 昭和7年11月(3.11)通巻31号「『自然と純粋』について」(書評)
 昭和8年5月(4.5)通巻37号 ジュリアン・バンダ「精神の危機」(翻訳)

「四季」
 昭和8年5月 季刊第一冊 一九三三年春「文学は軽蔑によって」(警句?)
 昭和8年7月 季刊第二冊 一九三三年夏「ルソオは言った」(警句?)

「セルパン」第一書房 日本近代文学館に総目次あり
 1931.6 通巻2号「機械と小説家」所蔵:国会D
 1931.9 通巻6号 「ノートより」所蔵:国会D
 1932.5 通巻15号 「日本のフアツシズム文學」所蔵:国会D

「芸術派ヴアラエテー」赤炉閣書房
 昭和5年 第1輯 3版「創作 プロスペルメリメ」所蔵:国会D

文芸春秋
 1930.7(8.7)「ハーヴェーファイァストーン」所蔵:国会D

「経済研究」
 1927.1(4.1)「耕地所有權移動の趨勢と米價」(片山達吉名義)所蔵:国会D

『海外新興芸術論叢書 新聞・雑誌篇第7巻 1927~1929 昭和2年昭和4年ゆまに書房 2005年
 (「山繭」昭和3年3月(3.3))カジミル・エートシュミット「シュテルンハイム」(翻訳)の復刻。

芥川竜之介研究資料集成 第8巻追憶』関口安義編 日本図書センター 1993年
「追憶」吉村鐵太郎

「思想」岩波書店
 1930.4 通巻95号「遊離者の文学」

「文学風景」天人社 昭和5-6年
 昭和6年1月(2.1)「文芸時評 机上の兵法」

「文藝汎論」文藝汎論社
 昭和6年10月(1.2)「結末について」
 昭和7年10月(2.10)「来たるべき文学と古典」

リベルテ第一書房 昭和7-8年
 昭和7年12月 第2号「椋鳥通信 泰西書物往来」

「椎の木」(第三次) 椎の木社
 昭和8年11月(2.11)「著者への尺牘」(長谷川巳之吉、城左門との共著)

帝国大学新聞」
 昭和8年5月29日 「月評」


【参考図書】
三田文学
 昭和5年11月(5.11) 北原武夫「月評」(「ポール・モーランのニューヨーク」)

「尺牘」椎の木社 所蔵:日本近代文学館
 昭和8年2月 1号 岩崎良三「エズラ・パウンド氏の《ホレース》 吉村鉄太郎氏に」

「学苑」 昭和女子大学 近代文化研究所
 平成4年1月 629号 猪熊雄治「素描・吉村鉄太郎」 所蔵:国会D
※鉄太郎の批評全体に寸評を加えつつ、流れを見極める労作。参考図書はこちらを参照すること。おすすめ。